取引先の信用調査をする方法 

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製品や商品を販売して代金を回収するまでは、取引先に信用供与していることになります。これを与信といい、取引先にお金を貸していることと同じことです。その代金回収確実性を管理することが与信管理です

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決算書からわかること


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与信管理は、取引先企業の将来における支払い能力を見極めるために行います。

そして、決算書を分析する目的は、過去のデータである決算書から、将来のキャッシュ・フローを見極めることです。

将来発生する代金の回収に不安がないかどうかを判断するのです。

財務分析においてもっとも重要なことは、将来必要なキャッシュ・フローを中長期的に本業で獲得し続けることのできる企業であるか否かを判断することです。

そして、取引先の経営が安定し、中長期的に存続すれば、自社が長期間にわたって安定した取引が行える先となりえます。

財務分析は、決算書により過去を論評することが目的ではありません。

あくまでも、将来を判断するための分析です。

したがって、過去の決算書に問題があっても、今後業況が回復し、支払いの見通しに不安がなければ取引を推進するべきです。

また、過去の内部留保がいくら厚く、自己資本比率が高くても、将来の支払いに不安がある場合は、取引の見直しや撤退を考える必要があります。

キャッシュ・フローとは、ある期間の事業活動において、流入したキャッシュから、流出したキャッシュを引いたものです。

ちなみに、キャッシュとは、現金および現金同等物のことです。

また、現金とは、手許現金と、当座預金・普通預金・通知預金などの要求払預金をいい、現金同等物とは、容易に換金することができ、かつ、価格の変動についてわずかなリスクしか負わない短期投資のことです。

現物同等物には、取得日から満期日または償還日までの期間が3カ月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻条件付現先、公社債投資信託などが含まれます。

要するにキャッシュ・フローとは、1年間で、すぐに支払に使える現金に換えることのできる金額をどれだけ増加させたかということです。

信用調査では、キャッシュ・フローを将来いくら獲得できるかを見極めることが重要です。

決算書分析の究極の目的は、この点にあります。

信用調査を行う上では、キャッシュ・フローの分析が有効です。

たとえば、企業が倒産するのは資金がショートしたときです。多くの企業は、金融機関からの借入金があってはじめて経営が成立します。

そして、金融機関から借入れができなくなると、企業は倒産します。

一方、金融機関から借り入れを継続するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。

@債務超過でないこと

A一定期間に獲得するキャッシュ・フローで、金融債務を償還できること

キャッシュ・フローを表す財務諸表には、キャッシュ・フロー計算書がありますが、多くの非公開企業では作成していません。

そこで、以下の式を用いて、キャッシュ・フローを損益計算書から簡便に計算します。

キャッシュ・フロー=当期純利益×(1−実効税率)−配当金+減価償却費等の非資金費用
なお、当期純利益をベースにしてキャッシュ・フローを算定した場合には、特殊要因が含まれている可能性があります。当期純利益を算定するうえでは、臨時的な損益である特別損益が加算されています。そこで、企業の経常的な実力を知る場合には、当期純利益を経常利益に置き換えて、以下の数式で計算するとよいでしょう。

キャッシュ・フロー=経常利益×(1−実効税率)−配当金+減価償却費等の非資金費用…(A)式

営業利益でなく経常利益を用いるのは、日本の企業のほとんどが、金融機関等からの借入金なしでは経営が成り立たないため、営業外費用として計上される支払利息を差し引いた後の経常利益で判断するほうが、企業の実力をより正確に把握できるからです。

上記の数式のうち、「経常利益×(1−実効税率)」の意味は、税引後経常利益を算出しているということです。

実効税率とは、法人税や事業税など企業が実際に課される税金の税率のことで、約40%です。「配当金」は、決算確定時にキャッシュが社外に流出します。

そこで、キャッシュ・フローを計算するうえでは控除する必要があります。

「減価償却費等の非資金費用」の減価償却費は、経常利益を計算する際には、販売費および一般管理費と製造原価ですでに費用として控除されています。

しかし、減価償却費を計上する際には、他の費用と異なり、資金の流出はありません。

減価償却の対象となる資産を取得した時点で資金が流出しているので、さらに減価償却費を資金の流出としてとらえると、資金の流出を二重に計上することになります。

そこで、キャッシュ・フローの計算では、減価償却費を加算する必要があります。

同様に諸引当金も、経常利益を算出する際には費用として控除されていますが、資金の流出ではないため、加算する必要があります。

次の貸借対照表と損益計算書から、前々期と前期のキャッシュ・フローを実際に計算してみましょう。

■[BS]貸借対照表

科目 前々期 前期 科目 前々期 前期
流動資産 102 142 流動負債 191 187
現金および預金 20 24 支払手形 40 44
受取手形 22 25 買掛金 88 69
売掛金 33 42 短期借入金 32 42
棚卸資産 22 45 未払法人税等 0 0
その他 5 6 その他 31 32
固定資産 315 299 固定負債 116 147
要償却資産 294 278 長期借入金
投資その他の資産 21 21 負債合計 307 334
株主資本 110 107
純資産合計 110 107
資産合計 417 441 負債・純資産合計 417 441
(割引手形) 76 74
(単位:百万円)

■[PL]損益計算書

前々期 前期
売上高 592 531
売上原価 485 450
売上総利益 107 81
管理費 83 79
営業利益 24 2
営業外収益 1 1
営業外損失 5 6
(うち支払利息) -5 -6
経常利益 20 -3
特別損益 0 0
税引前当期純利益 20 -3
法人税等 7 0
当期純利益 13 -3
(減価償却費) 26 26
(単位:百万円)

前々期:経常利益20×(1−実効税率0.4)−配当金0+減価償却費等の非資金費用26=38

前期:経常利益▲3×(1−実効税率0)−配当金0+減価償却費等の非資金費用26=23

※実効税率は約40%なので0.4としますが、赤字決算の場合、税金は払わなくてもよいので0とします。

信用調査を行う上では、このキャッシュ・フローの計算式だけでは不十分です。

増加運転資金と設備投資額を控除していないからです。

これらを控除した金額が、金融機関に対する借入金の元金返済に充当することのできる金額であり、信用調査を行う上で求めるべきキャッシュ・フローの額となります。


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これを計算式にすると以下のようになります。

キャッシュ・フロー=経常利益×(1−実効税率)−配当金+減価償却費等の非資金費用―増加運転資金―設備投資額・・・(B式)

この計算式で求められるキャッシュ・フローで借入金の総額を割って、10年以内なら、確実に金融機関の支援を継続して受けることができるキャッシュ・フローを獲得している企業だといえます。

なお、金融機関が実施している自己査定では、債務償還年数を算出する際に償却財源としてのキャッシュ・フローは税引後利益と減価償却費のみを加算して算出するケースが多いようです。

また、債務の残高から正常運転資金を控除した金額を要債務償還額としています。

企業の資金調達は、事業により自力でキャッシュ・フローを獲得する方法と、金融機関等から借入れて調達する方法が代表的です。

設備投資額や借入れの返済額を常に自力で稼ぎ出すことは困難なので、金融機関から必要なときに必要な額を借りることができることは、企業が存続するうえで最も重要な要件です。

一方、運転資金は、次の式のとおり定義されます。

運転資金=売上債権(受取手形+売掛金)+棚卸資産―仕入債務(支払手形+買掛金)

販売したもののまだ代金を回収していない売上債権の金額相当額と、まだ販売していない棚卸資産の金額相当額は資金として必要です。

一方、仕入債務相当額は一定の期限まで代金の支払いが猶予されるため、その分を差し引いた金額は、企業が経常的に事業活動を行うために必要不可欠な資金であるといえます。

増加運転資金は、分析する期の運転資金と、その前の期の運転資金を比較して、減少している場合はキャッシュ・フローのマイナス要因、増加している場合はプラス要因と考えます。

先の貸借対照表と損益計算書から前々期、前期の運転資金必要額と、前期の増加運転資金を計算してみます。

前々期の運転資金必要額:

売上債権(受取手形22+割引手形76+売掛金33)+棚卸資産22−仕入債務(支払手形40+買掛金88)=25

前期の運転資金必要額:

売上債権(受取手形25+割引手形74+売掛金42)+棚卸資産45−仕入債務(支払手形44+買掛金69)=73

前期の増加運転資金:

前期の運転資金必要額73−前々期の運転資金額25=48

増加運転資金が48ということは、キャッシュ・フロー上48のマイナスの影響があるということになります。

受取手形と売掛金、棚卸資産の3科目は、増加するとキャッシュ・フロー上マイナス、減少するとプラスになります。

一方、支払手形と買掛金の2科目は増加するとキャッシュ・フロー上はプラス、減少するとマイナスになります。

このように、貸借対照表上の勘定科目の増減をキャッシュ・フローと結びつけることは重要なことです。

勘定科目とキャッシュ・フローの関係は次のとおりです。

資産(現金・現金同等物を除く)の増加 キャッシュ・フローの減少
負債・純資産の増加 キャッシュ・フローの増加
資産(現金・現金同等物を除く)の減少 キャッシュ・フローの増加
負債・純資産の減少 血腫フローの減少

貸借対照表上で、棚卸資産や売掛金、受取手形が増加した場合、キャッシュ・フローのマイナス要因となります。

しかし、その場合、合理的な理由があるかどうかを考えてみる必要があります。「増加」イコール「悪い」というわけではありません。

たとえば、大企業のほとんどは、売上債権が仕入債務を上回っています。

そして、売上規模が大きければ大きいほど、その差額も起きくなり、運転資金の必要額が増加します。

つまり、キャッシュ・フローのマイナス要因となります。

しかし、この場合、キャッシュ・フローのマイナスが大きくなることは悪いことではありません。

一方、不良性の売掛金が増加してキャッシュ・フローがマイナスになる場合はよいことではありません。

企業が存続するためには、新たな設備投資も不可欠です。

先の貸借対照表では、前々期の要償却資産額は294、前期が278です。

今期の減価償却額が26だとし、前期に取得して前期のうちに減価償却した金額と、前期、または、前期以前に取得して前期に除却した資産が0だと仮定すると、前期の設備投資額は次のとおりになります。

287−(294−26)=10

前述の(A式)に基づくと、前期のキャッシュ・フロー額は23でした。

また、(B式)で計算すると以下が前期のキャッシュ・フローになります。

(B)=(A式)23―増加運転資金48−設備投資額10=▲35

この企業の実態は(B式)が表しています。

つまり、金融機関に対する返済原資はなく、反対に資金が35不足していたことになります。

このように、損益計算書だけでなく、貸借対照表を組み合わせてキャッシュ・フローの分析を行うと、企業の実態を把握することができます。

しかし、いままで分析したのはあくまでも過去のキャッシュ・フローです。

信用調査では、企業の将来を予測する必要があります。

そこで、予測する期の貸借対照表や損益計算書がどのように変化するかを予測して、将来のキャッシュ・フローを予測する必要があります。

将来のキャッシュ・フローを予測する際には、短期的なキャッシュ・フローではなく、中長期的な視点で考える必要があります。

短期的なキャッシュ・フローは在庫の圧縮や売掛金の減少を図ることで、増加させることができます。

しかし、中長期的には、そのような増加策をとり続けることはできないからです。

キャッシュ・フローで金融機関からの借入金を10年で返せる状態が保たれている企業は健全であるといえるでしょう。

一方、借入金の返済が10年を超えている企業が、一概に取引に値しないわけではありません。

10年を超えた場合には、金融機関との関係が重要になります。

企業は不足した資金を、金融機関から調達できれば存続することが可能です。

そこで、調査対象企業が、金融機関から継続支援を受けることができる関係が保たれているかどうかを調査する必要があります。

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